「リジェネレティブ・アグリカルチャー」 プロジェクト

Regeneration of Healthy Soil for Future

研究概要

当研究室では、環境を再生しながら食料を生産する、という新しい形の農業技術である「リジェネレティブ・アグリカルチャー」を研究しています。近代農業は、周辺の川や海、大気、土などを汚染するリスクが高く、このことは世界的な問題となっています。ソニーグループと設立した産業創出講座「ソーシャル・イノベーション部門 for プラネタリーバウンダリー」のテーマの一つであるリジェネレティブ・アグリカルチャーでも、この課題に対して土壌・大気・水域における複雑な栄養素の循環をセンシング技術などにより効率よく捉え、環境負荷が小さく生態系の機能を最大限活用した、持続的な環境再生型(リジェネラティブ)農業の実現に向けた取り組みを、北海道内の牧場と連携して進めていきます。特に、土に関してはまだわかっていないことが多く、その「健康度合い」を定量するというのがこの研究の一つであるため、プロジェクト名をRegeneration of Healthy Soil for Future「未来のための健康な土の再生」と名付けました。ヘルシーソイル・プロジェクト、と呼んで下さい!「ソイル」とは土のことです(英語)。

研究内容・拠点など

この研究は、実際の農業従事者と共同で行っています。拠点は三カ所あり、それぞれ全く異なる形態の営農をしています。盤渓では、森林を開拓しながら馬や牛の放牧を始める研究、日高では質の高い牛乳を生み出しつつ環境負荷を最低限にするための研究、そして黒松内では肥料や農薬を一切使わずに、付加価値の高い牛肉を作るための研究をしています。農業従事者と連携しながら研究をすることで、より社会に応用しやすい研究成果が出せると考えています。研究内容については、SNSなどで日々更新している内容をご覧くださるとより詳しくわかりますが、土の状態、牧草の生育、牛の様子、天候の変化など、たくさんのデータを集めています。これらを総合的に考え、ヘルシーソイルを達成する近道を探るプロジェクトです。

なぜ今リジェネレティブ、そして「ヘルシーソイル」なのか

食料生産が「持続的ではない」ことは長年問題となってきています。持続的でない、とは、このままずっと同じような食料生産はできない、という意味です。化学肥料は基本的には枯渇する資源を切り崩しながら作られていますので、その資源が無くなってしまったらもう肥料を買うことはできなくなるかもしれません。また、良い土も同じです。これまでは、森やその他自然を切り開いて農場にして、そこの土が悪くなってきてしまったら別の森などを切り開くという農業の形が取られてきましたが、そのような考えで食料を作っていてはもう地球がダメになってしまうかもしれません。また、食料生産に由来する温暖化ガスも問題になっています。そこで、私達は食料生産を行いながら地球を良くするための研究を行うことにしました。

特に、は地球の皮膚とも言われていて、地球の健康に深く関わる食料生産の基盤です。土には作物を育てる栄養素が含まれていることはよく知られています。でも、土の役割はそれだけではありません。例えば地球温暖化を防ぐために二酸化炭素を貯めこんだり、家畜の糞や私達が生み出す他の廃棄物を分解するための微生物がたくさん棲んでいたりします。作物が育つには、土は栄養素を保持するだけでなく、水をスポンジのように含み、根がしっかりと張ることができる良い構造を持っていなければなりません。このような様々な土の「役割」を維持し、管理するための農業が今求められているのです。しかし、これらすべての要素をすべての農場で監視するのはとても大変です。

そこで、ソニーグループが既に持っているたくさんの技術やセンサーなどを利用することを目指しています。土の健康度合い、つまりソイルがヘルシーかどうかをぱっとわかるようになれば、より多くの農業従事者が持続的な食料生産を営むことができるはずです。