環境生物地球化学ブログ (日)

内田研究室の研究テーマは「環境生物地球科学」という名前となっています。ただ、実際何を研究して、どんなことを日々やっているのか、それはテーマを見るだけではわからないと感じました。それで、このブログを通して、どんなことを研究しているのか、ということを少しずつみなさんに伝えなければいけないと思っています。質問があればいつでもどうぞ。

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実験道具の話

posted May 6, 2013, 12:50 AM by Yoshitaka Uchida Hokudai

私たちはフィールド試験をするタイプの科学者です。でもフィールド試験をする前に、小さなポットなどを使って試験をします。フィールドで畑を実際に使った試験は、一年に一度、うまくいっても二度しか出来ません。農家が一年に一度だけお米を収穫するのと同じです。リスクが高いフィールド試験をするタイプの科学者は少ないです。台風などで、せっかくうまくいっていたフィールド試験がすべてダメになってしまうこともあります。予期せぬことがたくさん起こるのがフィールド試験なのです。

でもフィールド試験は、とても大事だ、ということは簡単に理解できると思います。例えば、新しい肥料を開発しようとした場合、もちろん実験室レベルや、ポットを使って実験をたくさんして、肥料を検査することが出来ますが、最終的に農家のみなさんに使ってもらう前にフィールドで試験を絶対にしなくてはいけません。

そのフィールド試験をする前に、小さな規模で出来るポット試験などがあるわけで、小規模実験ももちろん重要です。私はその辺のお店で買えるような道具をよく使います。今日は写真にあるようなものを買ってきました。これで、肥料をたくさん使いすぎると環境にどんなダメージがあるのか、ということを調べていこうと思っています。

炭素循環の話

posted Apr 19, 2013, 12:31 AM by Yoshitaka Uchida Hokudai

植物が二酸化炭素を吸収して酸素を排出している、という話を聞いたことがあると思います。逆に私たち人間や動物は、その酸素を呼吸して、二酸化炭素を吐き出します。このようにして植物の恩恵を得ているわけです。ですから、この二酸化炭素と酸素のバランスは、地球生命が健康であるために重要であることがわかるでしょう。植物がこの地球上で減り続けてしまえば、大気中の二酸化炭素が増加し、それは今問題になっている気候変動を引き起こすと考えられています。

 私たちの研究室では、この「炭素循環」を研究しています。炭素循環は、さきほど示したように単純化することが出来ますが、実際はもっともっと複雑です。例えば植物が生えている土も呼吸して二酸化炭素を排出するのです。それは土に住んでいる微生物が呼吸をするからです。植物の根も呼吸をします。実は、土壌に蓄えられている炭素は、大気中に二酸化炭素として存在している炭素よりもずっと多いのです。ですから、この土壌が炭素を土に蓄える力を強くすることが出来れば、大気中の炭素も減らすことが出来ると私は考えています。

 でも、土壌の微生物と、土壌中の炭素の関係はまだまだ分かっていません。私の研究室では、土壌から排出される二酸化炭素量を測定したり、土壌から炭素を抽出して濃度を測ったりしながらそのメカニズムを調べています。

亜酸化窒素の話

posted Mar 20, 2013, 10:12 PM by Yoshitaka Uchida Hokudai

この研究室では亜酸化窒素(N2O)の研究を今までたくさん行ってきました。N2Oは、畑から出る温室効果ガスです。ですからN2O排出は減らさなければならないのですが、それは簡単ではありません。

なぜでしょうか。それは、N2Oがもともとは窒素肥料からできるガスだからです。現代農業では、窒素肥料は高い収穫量を得るために必須なので、窒素肥料を単純に減らすことは難しいとされています。

窒素肥料だけではなくて、動物の尿などもN2Oの重要なソースです。ニュージーランドではヒツジや牛の尿からのN2Oが主要な温室効果ガスの一つとされています。

私たちのチームは、窒素肥料を減らすことなく、収穫量を減らさずにどうN2Oガスを減らすことが出来るかを研究しています。実は、N2Oガスを減らす、ということは、窒素を畑に閉じ込めておくことにもなるため、収穫量が増加する可能性さえあると私たちは考えています。今までの研究で、下記のようなオプションによりN2Oを減らせる可能性が示唆されてきました。
  • 土壌環境を整える(土壌の構造が悪いとN2Oがたくさん出ることがわかっています)。
  • 肥料をあげるタイミング(植物が必要としているときに肥料をあげる)。
  • 被服肥料などを用いる。
  • 微生物を用いてN2Oを削減する。
ただ、これらの方法は、土壌タイプや気候などにより効果が大きく異なることもわかってきました。まだまだ研究を進めなければいけない分野です。

窒素循環の話

posted Mar 6, 2013, 7:00 PM by Yoshitaka Uchida Hokudai

この研究室の一つの大切な研究は、窒素循環に関するものですので、今日はそれについて説明しようと思います。わかりやすく。たぶんみなさんの多くは「水循環」についてよく知っていると思います。雨→川→海→雲→そして雨、という話です。どこかで勉強したことがあるでしょう。

それと同じで、窒素(N)も循環しているのです。私たちが水を飲まなければ死んでしまうのと同じように、窒素も体の中になければ生死に関わるものです。たとえばタンパク質などは窒素がないと出来ません。

左の図を見て下さい。空気の80%近くは「窒素ガス(N2)」ですが、私たちは空気を吸っても、その窒素ガスを自分の体の栄養とすることはできません。でも植物の一部は、空気の窒素ガスを栄養として蓄えることが出来ます(plant N)。そしてそれを食べれば、私たちも窒素を体に蓄えることが出来るのです(animal N)。そしてその体の中の窒素は、いずれ外へ出ていきます。たとえばおしっこの中にはたくさんの窒素が含まれています。図では、わかりやすいように牛と牧草地を書きましたが、そのおしっこは土に返り、土の中の窒素となります(soil N)。それで、その土の中の窒素は、また植物によって使われたり、または土の中の生き物によってガスに変えられたりします。

ガスになってしまった土の中の窒素はまた空気に戻っていきます。

窒素がぐるっと一回転したのがわかったでしょうか。これが「窒素循環」です。この循環、すばらしいと思いませんか? 100%リサイクル、廃棄物ゼロの循環です。私たちは窒素循環のまだわかっていない部分、特に上の図でいうと「soil N」の部分をターゲットにした研究をしています。

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